コンチェルトは、私にとって何だったのか
みなさんは、「コンチェルト(協奏曲)」にどんなイメージをお持ちですか?
かっこいいやつ!
教本がヴィヴァルディのコンチェルトあたりまで進むと、ヴァイオリンらしい曲を弾いてる雰囲気が出ますよね。
オケのほうを弾いてると幸せ!
自分は聴き惚れられるしお客さんはソリストの音を聴いてるから、(弾けてない)自分の音が目立たなくて済む!笑
自分には関係ないかな…一生弾かないだろうし。
なるほどー。
やっている楽器によっても認識が違いそうだなあ。
じつは最近、コンチェルトとの関わり方について考える機会がありました。
私はこれまで、コンチェルトというものをどう捉えてきたんだろう?
自分の過去を振り返ってみると、その時々でコンチェルトの見え方はずいぶん違っていたように思います。
本記事において「コンチェルト」は、
- 子どもの頃から音高時代まで→ヴァイオリン協奏曲
- 音大時代から記事最後まで→ジャンルとしての協奏曲(おもに古典派・ロマン派)
を指します。
子どもの頃|コンチェルトは教本と発表会の曲だった
子どもの頃のコンチェルト認識は、
- 教本に載ってる曲
- 発表会で弾く曲
- 数ある曲のうちの一つ
でした!
「コンチェルト」「エアヴァリエ」「ソナタ」「カイザー」「スパゲッティ」が同じカテゴリに入っている感じだったかもしれません。
明らかに違うのが一つ混じってるぞ。笑
カタカナ語つながりではあるけどw
私が子どもの頃に弾いたコンチェルトは、
- ザイツ
- ヴィヴァルディ
- アッコーライ
- ベリオ
などなど。
技術面でも音楽的にも、教育段階として必要不可欠で立派な作品なのですが、もちろん当時はそんな認識はありません。
そのうち「音階、エチュード、コンチェルトの三本立てで勉強するのが当たり前」みたいになってきて、「コンチェルト」とすら言わずに作曲家名で言っていたかもしれません。
???
今なんの曲やってるの?って聞かれたら「ヴィオッティの23番」「モーツァルトの3番の1楽章」って答える感じ。
なるほどにゃー。
小学生高学年から中学生|コンチェルトはひたすら練習する曲だった
この時期の私にとってコンチェルトとは、ひたすら練習する曲でした。
コンクールや入試の課題になりやすい曲を練習して、テクニックを身につける感じだったと思います。
先生の方針で「課題曲は練習するけどコンクールには参加しない」という時もありました。
私自身もヴァイオリンにあまり興味が無い時期だったので、それぐらいでちょうど良かったかもしれません。
そして(私だけかもしれませんが)不思議なことに、緩徐楽章をレッスンの課題として与えられたことはあまり無く、
「コンチェルトといえば第1楽章か第3楽章。とにかく速いやつ」
そんな感覚がありました。
振り返ってみれば「今この子に緩徐楽章を与えてもあまり意味が無い」と思われてた可能性が高い気が。笑
一方で、伴奏と一緒に弾くことは小さい頃から好きだったので、
なんだか面白そう!
と、
伴奏譜のほうに
興味を持つようにもなりました。
でも、勉強方法は誰も教えてくれないので、
- ソロパートを練習する
- ピアノパートを弾いてみる
- 飽きて練習をサボる
- 叱られる
- 仕方なしにソロパートを練習する
の繰り返しでした。
おや、途中また変なのが混じってるぞw
音高時代|コンチェルトは試験と受験のための曲だった
この時期の私にとってのコンチェルトは、「試験・コンクール・受験で弾く曲」でした。
そしてコンチェルトの中にも2種類あって、「メンデルスゾーンやチャイコフスキーは頑張って勉強する曲、ベートーヴェンやブラームスは鑑賞する曲(全楽章を聴くと長いから)」という感覚でした。
ずいぶん勝手な分類ですよね。笑
緩徐楽章は相変わらず存在感が薄く、ひとつの作品の中に
- 弾いたことのある楽章
- 聴いたことはある楽章
- 存在を忘れかけている楽章
が混在していました。
幸いだったのは、音楽科の高校に進んだこともあり「楽曲分析」を授業で習ったこと。
伴奏譜の見方(読み方)が少しわかってきたのもこの頃です。
伴奏パートがどうなっているかわかると、なんだか曲がわかった気になって嬉しかったのを覚えています。
でも、「オケ伴で弾いてるのは超一流の人」っていう認識があったから、「オケスコアは自分には縁がない」とも思ってました。
「ここの美味しいメロディはクラリネットが吹いてる」ぐらいの認識は持つようにしてたけど、それは伴奏譜にもチラッと書いてあるので、「スコア=めくりの多い楽譜。楽曲分析の先生に言われたことをチェックするだけのもの」っていう存在でした。
まさか数年後に、スコアのほうを先に読むようになるとは。
人生何があるかわからないですね。
音大時代|コンチェルトは「弾く」から「聴く」へ広がった
高校までと大きく変わったのは、オーケストラの授業でした。
- コンチェルトのオーケストラ側を弾く
- オペラをオーケストラピットで弾く
などの機会が、年に数回あったのです。
ソリストを特等席で聴ける!!!
これが本当に面白かった。
客席で聴くのとは全然違うし、自分も勉強したはずのソロパートが、全く違うふうに聴こえる。
舞台上でしか味わえない体験ですよね。
分身の術を使って「半分客席、半分舞台上みたいなことができないものだろうか」と思ってました。
夢じゃん!
一方でソロのレッスンはと言うと・・・
超絶技巧系のヴァイオリン曲(パガニーニ、ヴィエニャフスキ等)にはあまり興味が持てず、早々に距離を置いていました。
大学生になったんだから、ベートーヴェンやブラームスの協奏曲も勉強してみたいな〜。
そんなことも考えるようになり、念願かなって
- ブラームスやベートーヴェンの協奏曲
- ピアノとのソナタ(それまで殆ど取り組む機会が無かった)
も勉強したものの、
技術だけでは弾けない曲があるんだなぁ。。。
そんなことに気づき始めます。
ソロパート譜に飽き飽きした結果、大学の練習室ではヴァイオリンよりピアノを弾いてる時間のほうが長かったかもしれません。
???
ヴァイオリンの練習は?
やる気が出なかった。笑
重症だ。笑
アマオケでコンサートマスターを始めた頃|ソリストの気持ちを想像するようになった
転機になったのは、社会人になってから。
御縁があり、アマチュアオーケストラでコンサートマスターをさせていただけることになったのです。
こともあろうに、デビュー戦が、ショパンのピアノ協奏曲第1番。
コンサートマスターとして関わる以上は、ソロパートも知っておいた方が良さそうだな…。
ぐらいの軽い気持ちで、おぼろげなピアノでソロパートを弾いてみたところ…
自分がソリストだったら、ここはオケにこういう風に弾いてほしい!
そんな不思議な願望が生まれたのです。
それと同時に、
ここでオーケストラが走っちゃったら、ソリストが困るなぁ。
という感覚もわかってきました。
それからというもの、自分が弾ける楽器のコンチェルト(かつ時間の猶予がある時)は、無茶でも超絶ゆっくりでも良いので、ソロパートを一度弾いてみることにしています。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は「ラフマニノフ手大きすぎ!」と思いながら半年かかりましたが笑、思っていた以上の収穫がありました。
ふむふむ。
時間が無い時や自分が弾けない楽器の時は、ソリストの手の動き(挙動?)や歌い方を想像しつつスコアを読みます。
ソロ部分がわかれば、オケがどう弾けば良いかが、だいたいわかります。
なるほどにゃー。
何事でも、相手を知ることって大事ですね。
いいこと言うね。
そして今|コンチェルトをアンサンブルとして見るようになった
今の私は、コンチェルトのソロパートを勉強するとき、まずスコアを開きます。
自分が演奏する時だけでなく、レッスンで生徒さんと一緒に勉強する曲の時も、同様です。
ソロパートは、オーケストラの外側にいる存在ではありません。
むしろオーケストラの1パートであり、アンサンブルの一員です。
「ここは木管楽器との会話」「ここはオーケストラが主役だから、ソロは主張し過ぎない」みたいなこともわかるようになりました。
振り返って|変わったのはコンチェルトではなく私だった
振り返ってみると、コンチェルトそのものが変わるわけは無く、私の立ち位置が変わったということなのかもしれません。
発表会で弾く曲だったコンチェルト。
試験で弾く曲だったコンチェルト。
そして今は、たくさんの演奏者が一緒に作る大きなアンサンブルとして見ています。
最近、昔からぼんやり考えていた
半分客席、半分舞台上みたいな体験ができたら面白いのに…。
という発想を思い出しています。
この夏、その感覚にかなり近い企画に関わることになりましてね。
コンチェルトをソリストの視点からも、アンサンブルの視点からも体験できる企画です。
次回は、その話を書いてみようと思います。
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ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。東京藝術大学、茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。都立芸術高校・東京藝大をヴァイオリンで卒業後、東京藝大院修士ソルフェージュ専攻を修了。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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