絶対音感は本当に必要なのか疑問を呈してみた~習得の訓練は不要!?
常々思っています。
「そもそも、絶対音感って必要なの?」
私は、この問いに対するきちんとした答えを出せません。
絶対音感がついていない状態を、経験したことがないから。
聞かれても定義に困るんですけど…「絶対音感」
テレビなどで「身の回りの音がすべてドレミで聞こえる」などと説明されていることがあります。
中にはそういう方もいらっしゃるかもしれません(私は違う)。
ぶっちゃけ、「絶対音感」という言葉の明確な定義は難しいと思いますが、
少なくとも、世の中の音全てを西洋式のドレミで表そうとするのは間違っていると思うのです。
自分の経験から、例を挙げてみます。
音程のある打楽器と、無い打楽器
打楽器と聞いて、どんなものを思い出しますか?
小学校にありそうなものだけでも、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、木琴、ティンパニ・・・、たくさんありますね。
これらのうち、木琴とティンパニの音は、ドレミで表すことができます。
他の4つは、ドレミでは表しません。
そう、「世の中の音全てをドレミで表す」のは、無理なんです。
インドネシアのガムラン
大学時代の話。
友達の誘いで、インドネシアのガムランという楽器を触る授業に出ていました。
ガムランと一口に言っても何種類かの楽器があって(詳細はwikipediaとかに譲りますw)、
私が触ったのは、金属の板が鍵盤のように並んでいる楽器でした。
見よう見まねで叩いてみると、何となく音階っぽい音は出るものの、なんか違う。
過去に聴いてきた西洋音楽の音階とは、全く違う世界の音でした。
単純に「自分の知っているドレミファソラシドとは違う世界があるんだ!」と感じたのを思い出します。
能
これもまた大学時代の話。
音大で教職課程をとると、日本の伝統音楽についての授業が必須。
その中で、能の先生から、能の有名?な一節の歌い方を教わりました。
(あまり詳しく覚えてないのですが)音の高さの種類が、白鍵7つと黒鍵5つの12種類よりも全然少なかったのです。3~4種類ぐらいかな…。
それを覚えて歌うんですけどね。これもまたガムラン同様、それまで知らなかった世界の音だったんですよ。
今まで自分がやってきた「音楽」は、大変に狭い世界のことだったんだなと、何かを突きつけられた感じでした。
いうなれば、釈迦の手のひらの孫悟空の話みたいな…。
じゃあアンタはどうなのさ
「絶対音感あるんですか!?」と聞かれることがあります。
そして、いつも答えに困る(笑)
私は、音程の無い打楽器の音はドレミでは聞こえませんが、ピッチの明確な音が聴こえた時は「ピアノの鍵盤でいうところの何の音に近いか」がわかります。
でも、440Hz(時報の音)と442Hz(一般的なチューニングのA音のピッチ)を鳴らされて即座に聞き分けられるか?というと、正直自信がありません。
その時の体調や気分によっても変わるし…
ちなみに、西洋音楽以外の音楽を聴く時は、ドレミでは聴いていません。
なんとなく、雰囲気を聴いています。
絶対音感って、持ってると得なの?
魔法のフレーズのように思われている、絶対音感。
自分が音楽業界にいるからかもしれませんが、「*歳までじゃないと絶対音感は身につかない!」みたいな売り文句、よく耳にします。
自分をいちおう「絶対音感保持者」にカテゴライズして、得したことと損したことを書いてみます。
得した!と思ったこと
- 救急車の音マネ(ドップラー効果付き)やファ○マの入店音などをヴァイオリンでマネする時。
- 音高・音大受験の聴音。
今思いつくのはこれぐらい。
(…自分では気づいていないだけで、他にも何か得しているのかもしれませんが…)
1.は完全に才能の無駄使いですねー(笑)これをお金に変えられるようになればいいのかなw
「暗譜が速くなる」との記述も見かけますが、絶対音感とは必ずしも結びつかない気がするのです。
その人の思考回路とか、弾いてる楽器の種類にもよるんじゃないかと、ぼんやり思う今日この頃。
損した!と思ったことや、苦労していること
- 弦楽四重奏で、本当に綺麗に合う音程がどういう感じなのか、わからなかった
- A音を415Hz(通常のピッチより半音ぐらい低い)に調律する、古楽器の演奏を聴いた時の違和感
- 移調がニガテ
- 同じ名前の音でも、調性によって機能や役割が違うことに無頓着でいられた
(例えば、同じ鍵盤で演奏する、ト長調の3番目の音とハ長調の7番目の音の違いなど) - 歌を聴いてても、歌詞よりも音の方が耳に入る
1.については、それまで「音を相互関係ではなく「点」として聴いていた」ことが露わになったのかもしれません。
そんなこともあって、弦楽四重奏を極める気にはなれなかったなぁ…。
2.は、今では平気になりました。ブリュッヘンの18世紀オーケストラも、違和感なく聴いてます。
3.は、訓練でぶじに解消。生徒さんに出した移調の宿題を採点してたら、自然にわかるようになってました。
4.も、私は譜読みのやり方を変えたことで解消できました。
でも、本当に深刻な問題だと思う。
演奏が平板化して、その人の味が消えていくような気がするから。
5.は、今でもちょっと苦しい。克服したいとは思っていますが…。
そもそも…平均律だの純正律だの、その辺り無視されてません?
ここまで書いてきたことのうち、一つすっぽ抜けてる分野があります。
それは、音律。
平均律とか、純正律とか、ピュタゴラス音律とか…
(詳しくはとりあえずwikipediaへGo!)
絶対音感をつけさせるトレーニングには、平均律のピアノがよく使われるようです。
いちばん手っ取り早い道具なのは、間違いないですが…
でも、実際の演奏では、ピアノの鍵盤の音より微妙に高い音や、微妙に低い音も使われます。
導音(音階の7番目の音)を高めにとることで音階が完結した感じを出すこともあるし、半音よりも狭い「微分音」と呼ばれる音を使う曲もあります。
平均律で身につけた絶対音感と、微分音の世界。
相容れない関係のように思えます。
最初の方で書いた、ガムランや能の世界も、そうかもしれません。
ソルフェージュのレッスンに平均律のピアノを使うのって、どうなの?
これも非常に難しい問題。
どう転んでも、一番便利な道具なのは否定できないから。
でも、先生自身が平均律とそれ以外の音律の違いをわかっていて、平均律の欠点をうまくカバーできていれば、構わないと思います。
大事なのは、耳で合わせること
音程が合っているか否か?それを聞き分けるのはじつに単純。
聴いていて心地よいか否か。
私の経験では、ある程度のレベルまで、これで改善しました。
(「心地よく響く音楽を聴いた、原体験がある人」というのが条件ですが。)
改善しきれない場合にのみ、「今よりも上げる、下げる」指示を出したり、
(これはあまり言いたくないけど)「チューナーと睨めっこして」と言います。
吹奏楽経験者どうしの「この場合とこの場合は*セント違う」という会話を、耳にしたことがあります。
私は「この会話には絶対入れないな…」と思いました。
残念ながら、音程を数字で表したことがないので………
数字ではかる以前に、感覚的な問題だから………