現役音高講師が語る!東京藝大の入試実技攻略(その1・スケール編)
東京藝大の入試実技は、1次試験と2次試験に分かれており(作曲科はなんと3次まで!)、
1次試験を突破した人のみが、2次試験に進める仕組みになっています。
わぁー過酷。
1次で基礎的な技術をみて、2次で音楽力をみるのは、
どの楽器も共通していることかな、と思います。課題曲を見た感じでは。
(なお実技試験を突破した後は、ソルフェージュや副科ピアノの試験が待っています!)
私が受験した時の東京藝大ヴァイオリン専攻の実技課題は、こんな感じでした。
- 1次試験:カール・フレッシュのスケール(指定の調性)、エチュード(指定の曲。この年は何故か2曲あった)
- 2次試験:バッハの無伴奏曲(指定の曲)、指定されたコンチェルト(伴奏付き)
年によって多少の変化はあるものの、大まかな所は今(2025年)も変わっていないようです。
この記事では、私がヴァイオリンで受験した経験をいろいろ書いていきます。
ヴァイオリンで受験を考えている人はもちろん、他の楽器の人にも共通することはあるので、参考になれば幸いです。
スケール(音階)は入試突破のカギを握る
藝大入試は、1次試験を突破しないことには始まりません。
ヴァイオリンは、ご存知の通り自分で音程を作る楽器です。なので、試験する側にとって、基礎を丸裸にする最適解は、音階を聴くことなんですね~。苦笑
音階とひとくちに言っても、入試課題の音階は種類がとても多く、けっこう大変。
- 単音の3オクターヴ
- アルペジオ7種(単音)
- 分散3度(単音。ドミレファミソファラ・・・)
- 半音階(単音)
- 3度(重音)
- 6度(重音)
- オクターヴ(重音)
- フィンガードオクターヴ(重音。↑のオクターヴとは指番号が違う)
- 10度(重音)
かつては、1弦上での単音1オクターヴ+アルペジオ7種+分散3度+半音階(を4弦とも)も課されてましたが、最近は試験曲から外れてます。
一口に音階と言ってもこんなに大量!
高校生の頃の私は、1日の練習時間の3分の1をスケールに充てていました。
重音が苦手なら、まず単音を極めよう!
高校2年生のある日のレッスン。先生から、このように言われました。
しばらく単音だけをやってみよう。
単音がわかれば重音は弾けるから。
次のレッスンは1ヶ月後(月イチペースだった)。
私は、カール・フレッシュの1番(G線だけの単音スケール)と曲だけをレッスンに持って行きました(=重音はやらずに)。
調性はさすがに忘れましたが笑、1つの調性です。
先生は、
あ、1番をやってきたの?
5番のつもりで言ったんだけどなぁ(笑)。
でもまあいいや。
と言って、聴いてくださいました。
一通りご指導いただいたあと、
よくなったねぇ。
じゃあ今度は同じように5番をやってきて。
次のレッスンは、また1ヶ月後。
同じ調性でカール・フレッシュの5番を練習していきました。
一通り聴いていただいた後、
今ここで重音のスケールを弾いてみて。
おそるおそる重音のスケールを弾き始める私。
2ヶ月も全く弾いてないのだから、怖くないわけ無い。
でも不思議なことに、
面白いぐらい、スッと弾けたんです。
先生も思わず
ね、弾けるでしょ?
この現象を説明するとしたら、おそらく
単音の音階を通じて、音階そのものへの理解が深まり、
完成形のイメージがついた。
ってことだと思います。
あくまでも私個人の例なので、基本的には今習っている先生の指示に従ってほしいですが、
重音が苦手な人は、まず単音を極めよ。
よろしければお試しください。
上記のレッスンは、いちおう小5〜高1までカール・フレッシュの重音を練習していた人に向けた内容です。
「今まで一度も重音のスケールやったこと無い!」って人は、ここまでスッと行かないかも…。
まずは、今習っている先生のアドバイスを真摯に受けとめて、地道に頑張ってください♪
同時にいくつの調性を練習すれば良い?
東京藝大ヴァイオリン専攻の課題曲は、10月に調性が1つ指定されます。
課題が発表されるまでの時期はどうしていたかと言うと・・・
1つの調性を、1〜2ヶ月かけて勉強していました。
ほえ~。そんなに!?
弦楽器だからかも?
音程作るし。
音やポジションは違いますが、「長音階」「短音階」と括ってしまえば、シンプルに2種類になります。注:「ドリア旋法」など、いわゆる「旋法」と呼ばれる音階を除く。
開放弦の都合などで、弾きやすい調と弾きにくい調があるのは事実ですが
何調でも良いので、1つの調性を極めておくと、他の調性に応用が利きます!
①調号が多い調
②開放弦が使えない調
③ハイポジションが多い調
など、難しい調を早めに練習しておくと良いね。
音階を人前で弾く練習は、毎日できる!
音階を本番で弾く機会、ありますか?
・・・・・・。
自由曲で出れるコンクールに音階で出る猛者の方もいらっしゃいますが(おそらく場数を踏む目的でしょう)、けっこう勇気いると思います!
私は、高3の年明けから、緊張感を持たざるを得ない状況を毎日、家で作っていました。
それは、
練習の最初に、ウォーミングアップ無しでいきなりスケールを通して弾くこと。
楽器を出して、調弦して、すぐスケールを通す。
それで弾けるの?
うまく弾けるわけないじゃん!
手は冷えてるし、朝は頭が寝てるし。笑
でも、極度の緊張状態なら有り得なくも無いコンディション。
だから、リハーサルだと思って毎日続けた。
ほえーっ。
やってみようかなあ。
高3の2月に入って、学校に行かなくてもよくなってからは、
みたいな感じでした!
シンプルに、毎日6〜7回、本番と同じ状況を作っていた計算になります!
1週間で40回!?
改めて計算したら、なかなかの量だね。
40回コンクール出たら40万円以上かかるよ。
おかげで、試験本番では自信を持って弾けました。
何より、毎日続けたことは、今の私の原動力になっています。
音階を音楽的に弾いてみよう
音階を音楽的に?
どういうこと?
私は勤務校で、副科弦合奏の授業を担当しています。
授業なのでいちおう期末試験もあり、仲間や先生方に見守られながら、音階や短い曲をソロで演奏します♪
専攻楽器に関係なく、全員が何かしらの弦楽器を持って合奏してみよう!という授業です。(生徒さんの専攻楽器はピアノ、管楽器、声楽などいろいろ。)
音程や音色を作る過程が目に見えて興味深いようで、皆さん熱心に取り組んでいます♪
試験は、生徒さんの演奏に対して点数をつけながら聴くわけですが、
何年も聴いているうちに、大変興味深いことがわかってきました。
ちょっとぐらい弾き方や音がおかしくても、
音階に対する意識は、演奏に表れる。
専攻楽器では無いので、生徒は基本的に授業内で練習(週1回)するだけ。
何かしらの楽器をやっている子たちなので、楽譜は読めるし音もわかる。でもご存知の通り弦楽器は自分で音程を作らなきゃいけない。音はわかっても体が思うように動かない。それ以前に「えぇと弓はこうやって持つんだっけ」「小指(の指番号)は5!…じゃなかった4」とか、もう頭パニック。音階を1オクターヴ弾くなんてまあトンデモナイ大仕事。(それを乗り越えているだけで100点はらたいらに3000点!と思いながら採点しています♪)
そんな壁がありながらも、
①「音を平面的にド・レ・ミ・ファって並べました」って感じの演奏。
②上がって下りるイメージを持っている演奏。
③「今から◯調の音階を弾く」とか「◯調だからこんな風に演奏したいな」みたいに、具体的なイメージや理想像を持っている(あるいは持とうとしている)演奏。
これら3つの演奏は、
ビックリするぐらい違います。
イメージや理想像がある演奏は、ちゃんと音楽として伝わってくる。不思議ですね~。
要するに。
音階に対する意識の持ち方は、すべてを変える。
音階を一つの音楽として極めよう。
音階だけで長い記事になってしまったので、エチュードや曲のことはこちらの記事に続きます!
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ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。都立芸術高校・東京藝大をヴァイオリンで卒業後、東京藝大院修士ソルフェージュ専攻を修了。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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