ヴァイオリンでスケール全調を練習しよう!
私はヴァイオリンの生徒さんに、
すべての長調と短調の音階を
練習してもらっています。
超絶長期計画で、だけどね。
なぜかって?
すべての調性の響きに触れて初めてわかることが、
たくさんあるからです!!
念のため申し上げておきますが、
1回のレッスンで1つの調を仕上げてこられるツワモノ生徒様は・・・
そうそう居らっしゃいません💦(ご安心を・・・)
鍵盤を押すだけで済まない楽器ですので・・・。
1年以上かかる長期計画で進めています。
生徒さんはもちろん、私も気合いが要ります笑
大変ではありますが、全調の音階に挑戦する意味は大いにある!と思って、続けています。
長調と短調の仕組みを知るのが早道
西洋クラシック音楽でよく使われるのが
長調と短調
なのですが、
この2つの違いは単純に
全音と半音の並び方が違う
だけです!!!
ハ長調もヘ長調もイ長調もニ長調も、長調という括りにしてしまえば同じ。
イ短調もニ短調も変ロ短調も、短調という括りにしてしまえば、同じです。
長調は全部でいくつあるの?短調は?
理論上のお話ではありますが、
- 調号がつかない調・・・2つ
- 調号に#(シャープ)が付く長調・・・7つ
- 調号に♭(フラット)が付く長調・・・7つ
- 調号に#(シャープ)が付く短調・・・7つ
- 調号に♭(フラット)が付く短調・・・7つ
単純に合計すると30個あります。
えええええええええ。そんなにあるの!!!
とは言っても
- 理論上は存在するものの、調号として使われることはほとんどない調
- 見た目は違えど、同じ鍵盤で弾く調
も含まれているため、一般的な音階教本で取り上げられるのは
24~26の調性
にとどまっています。
ひとつも「とどま」ってないよ!笑
ヴァイオリンで弾きやすい調性は?
ヴァイオリンで弾きやすい調性は、なんといっても
開放弦がたくさん使える調
です。
具体的には
- ニ長調(D dur)
- イ長調(A dur)
- ト長調(G dur)
- ホ長調(E dur)
- ニ短調(d moll)
- イ短調(a moll)
- ト短調(g moll)
- ホ短調(e moll)
などです!
言われてみれば、開放弦の「GDAE」どの音にも、シャープやフラットが付かない調が多いかも!
イ長調とイ短調は「G」じゃなく「Gis」だからG線の開放弦が使えないですけど、1音ぐらい、頑張ればなんとかなりそうな・・・気がしてきた!
有名なヴァイオリン協奏曲は、開放弦をたくさん使える調性で書かれていることが多いです。
ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーの協奏曲はニ長調。
メンデルスゾーンはホ短調、シベリウスはニ短調ですね。
チャイコフスキーの2楽章はト短調。
ブルッフの1番は、1楽章がト短調、3楽章がト長調。
作曲家は、楽器が鳴りやすい調を選んでいるんですね。
開放弦がたくさん使える調を綺麗に弾こう!
開放弦がたくさん使える調をキレイに弾く第1段階は、
なんといっても
開放弦と同じ名前の音
の響きを、
開放弦の響きに合わせる
ことです。
「レ」と名の付く音はD線の響きに、
「ラ」と名の付く音はA線の響きに合わせます。
D線の響きと、その1オクターヴ上の「レ」を、合わせるってことですね。
オクターヴは、キレイに合っているかどうかが
比較的わかりやすい音程です。
まるで1弦しか弾いてないかのような、
純度の高い響きを目指してみましょう。
・・・てことは、調弦が合ってないと練習にならないってことかにゃ?
ご名答!私は大事なことを言い忘れてました。
音階を弾く前は必ず調弦!
超絶に大切すぎることを忘れてました!
音階を練習する前は、
絶対に
調弦しましょう。
練習の意味が
ゼロどころか
マイナス
になります…。
ひぃぃぃ。
時間の無駄になっちゃうの嫌だから、調弦から頑張ろ~っと。
ヴァイオリンで弾きにくい調性は?
ヴァイオリンで弾きにくい調性は…たくさんあります笑
「弾きにくい」の定義によると思うのですが、私は、大まかに4種類に分けられると思います。
- 1st position で弾きにくい調
- 楽器の特性的に響きにくい調
- なんとなくとっつきにくい調
- 存在自体が馴染み薄い調
1stポジションで弾きにくい調性
「ファーストポジションで」弾きにくく、初心者がつまづきやすい調は
- ハ長調(C dur)
- ヘ長調(F dur)
- 変ロ長調(B dur)
- ハ短調(c moll)
です!
「新しいヴァイオリン教本」(通称:白本)や「篠崎ヴァイオリン教本」だと、2巻あたりですね。
「ちょっとヴァイオリンが弾けるようになった人」がぶち当たる、そこそこ大きな壁かもしれません。
なんで難しいの?
指の広げ方が変わるからですよ。
初心者がこれらの調を弾きにくいと感じる理由は
1指(人差し指)を、渦巻き側へ広げて押さえるから
です!
それでいて、
2指(中指)の場所が、それまでと変わらない。
この指の広げ方が絶妙に難しく、習得に時間がかかるケースが多いです。
2指まで一緒に向こうに行っちゃったり、
広げた1指があらぬ方向に寝ちゃったり。
指が広がったは良いものの、音程が二の次になってしまったり。
・・・ぎくっ。
ファーストポジションじゃなかったら弾きやすい?
じゃあ、1stポジションじゃなかったら弾きやすいの?という疑問がわいたかもしれません。
そのとおり!
違うポジションで弾けば全て解決です!
ためしに
ハ長調とハ短調をサードポジション
ヘ長調と変ロ長調をセカンドポジション
で、弾いてみましょう。
いやいやいや、ポジション移動まだ習ってないし!
弾いてる途中でポジション移動するのではなく、最初から最後まで同じポジションのまま弾くので、今までと何ら変わりませんよ。
ギターのカポタストとか、カラオケでキーを変えるのと、同じ原理ですね。
あ、やってみたら、そこまで大変じゃなさそう…
最初はちょっと頭の切り替えが必要だけど、むしろファーストポジションより弾きやすいかもしれない・・・。
「調性の響きを知る」だけなら、無理をしてまで、ファーストポジションにこだわる必要はないと思います。
ヴァイオリンの特性的に響きにくい…けど比較的わかりやすい調
ヴァイオリンの特性的に響きにくい調は
- 変ホ長調(Es dur)
- 変イ長調(As dur)
・・・以外にもたくさんあるんですが。笑
あるんかい。笑
変ホ長調と変イ長調は
響きが比較的わかり易い調性
ではないかと思います。
長調だしねー。Es durはG線とD線は開放弦使えるし。
ファーストポジションで弾く時の指は、
へ長調(F dur)や変ロ長調(B dur)と同様に、
人差し指と中指を離します。
中指と薬指も離れます。
うーん、慣れないとちょっと難しいかもしれない・・・。
・・・!!!ひょっとして、サードポジションでハ長調弾くのと同じ感じですかね?
ご名答!!!
変ホ長調と変イ長調は、開放弦がほとんど使えません。
だからこそ、味わい深い、独特の響きが生まれるのではないでしょうか。
ブルッフの「スコットランド幻想曲」は、第3楽章が変イ長調、第4楽章が変ホ長調になっています。
なんとなくとっつきにくい調
ヴァイオリンでなんとなくとっつきにくい調性は
- 変ニ長調(Des dur)
- ロ長調(H dur)
- ヘ短調(f moll)
- 変ロ短調(b moll)
- 嬰ト短調(gis moll)
- 嬰ハ短調(cis moll)
- 嬰ヘ短調(fis moll)
- ロ短調(h moll)
あたりではないでしょうか。
いやいや、多すぎでしょ!(怒)
・・・独断と偏見に満ちてるかも。笑
そうです、結構あるんです笑
そして、これらをさらに3種類に分けます。
大雑把に、だけどね!
- 調号のシャープやフラットが5つの長調
- 調号のフラットが4つ以上の短調
- ホ短調以外の、シャープ系の短調
短調率たかいなー。
馴染みの薄い音が出てくる調性、と言えなくもないですね。
ヴァイオリンで弾くシャープ5つのH dur(ロ長調)、フラット5つのDes dur(変ニ長調)
えーっと、ファとドとソとレとラにシャープ…ラのシャープってなにー?😫
アイス(Ais)!
いやそういうことじゃなくて!
みたいに考えちゃうそこの貴方も。
Des dur はシ、ミ、ラ、レ、ソにフラットかぁ…頭が痛いなあ。
ドヴォルザークの「新世界より」の2楽章とか、小犬のワルツなんかは、たしかそんな感じだったような???
要するに朝じゃなくて、黒い鍵盤が多そうなイメージか(意味不明)
みたいに頭を抱えてる貴方も。
「調号が5つ」以外の、H durとDes durの共通点を考えてみてください。
(シンキングタイム)
あ、両方ともdurの音階!
そのとおり!!!
じゃあ、Es dur とかAs dur と同じように、サードポジションでC durを弾くやり方を、応用すればいいんですかね?
そうですね。耳慣れない音があるかもしれないけど頑張って。
どうしても自信がない音は、鍵盤やチューナーで確認しましょう。
ヴァイオリンで弾くf moll(ヘ短調)、b moll(変ロ短調)
わぁ調号にフラットがいっぱい…めまいがする。
そう思ったそこの貴方。発想を変えましょう。
ほえっ?
f moll(ヘ短調)とF dur(ヘ長調)の、共通点を探してみましょう。
(シンキングタイム)
あ、同じ音がけっこうある!
上りと下りで違う音がありますが、応用がききそうですね。
ヴァイオリンの音階教本で取り上げられる短音階は、「旋律短音階」です(「旋律的短音階」とも呼ばれます)。6番目と7番目の音が、上りと下りで異なっています。
同主調を攻略しよう
主音(音階の開始音)が同じ長調と短調の関係性を、
同主調
と呼びます。
ハ長調とハ短調とか、ニ短調とニ長調、みたいなことだね!
同主調は、同じ音が多く使われていますので
音階の練習にも応用できます。😄👏
音が違う所の前後に気をつければ良いんだね!
前後関係を見るのか…けっこう大変だけど、やり甲斐ありそう。
b mollって聞いただけで目まいがしてたけど、B durの同主調ってことは、B durと同じ音が多いのね。
出来そうな気がしてきた!やってみようっと。
ホ短調以外のシャープ系短調
えーっと、fis moll, cis moll, gis mollが難しいのは想像つくんだけど、そういえば意外とh mollってとっつきにくいなあ。
7番目の音(導音)がラのシャープ、ドイツ語だとAis…お腹すいたなあ。
もうアイスクリームから離れて!笑
h mollと同じ音から始まる(つまり同主調の)H durも、とっつきにくい調性でしたね。
シャープ2つ以上の短調って、
とっつきにくい音が導音になってる確率が
ほぼ100パーセント。(当社比)
導音=音階の7番目の音で、主音(音階の1番目の音)へ導く役割を持っています。
導音と主音は、必ず半音になります。
つまり、
- h mollの導音→Ais(ラのシャープ)
- fis mollの導音→Eis(ミのシャープ)
- cis mollの導音→His(シのシャープ)
- gis mollの導音→Fisis(ファのダブルシャープ)
になります。
ダブルシャープってこれのこと?
うん。既にシャープが付いている音を、さらに半音上げる記号だよ。
え、じゃあ、ファのダブルシャープは、ソの鍵盤を弾くの?
鍵盤的にはそうなるね。
すごく厳密なことを言い始めるといろいろ違うんだけどね。
ふーん。
ていうか、Eisはファの鍵盤で、Hisはドの鍵盤だよね?
Eisをファ、Hisをドって書いちゃダメなの?
そうすると、fis mollが「ファソラシドレファ・ファ」とか、
cis mollが「ドレミファソラド・ド」みたいに、
音階として意味不明な音の並びになっちゃうから、ダメだよ。
ぐぬぬ・・・
存在自体が馴染み薄い、フラットが6つの調とシャープが6つの調(Ges dur 変ト長調、Fis dur 嬰へ長調、es moll 変ホ短調、dis moll 嬰ニ短調)
わぁ!シャープやフラットがいっぱいで頭痛が痛い・・・
だめだこりゃ。本当に頭痛そう。
楽譜だけ見ると、プギャー😫😱ってなる方が多いと思います(断言)
でも、存在する調性なので、一通り通過しましょう。
「猫ふんじゃった」は Ges dur と Fis dur のどちらでも記譜できるよ。
そう言われても・・・
楽譜を見ても音がわからないよ!!!
いったん冷静になりましょう。
Ges dur の音階をよく見てください。
音符の場所がG durと似てませんか?
ほんとだ!音符の場所が同じだね!
ほー。
G durの音に全部フラットを付けて、
もともとシャープが付いて半音上がっているFisを半音下のFにすると・・・
・・・・わあ!Ges durの音になった!!!
つまり、Ges durは、G durが半音下がったと思えば良いのね。
目からウロコが落ちました。
同様に、Fis dur は F dur が半音上がった調、
es moll は e moll が半音下がった調、
dis moll は d moll が半音上がった調、
と考えることができます。
フラット7つの調って存在するの?シャープ7つの調は?
結論から言います。
調号のシャープが7つの調も
フラットが7つの調も
あります!!!!!!
- Ces dur(変ハ長調)
- as moll(変イ短調)
- Cis dur(嬰ハ長調)
- ais moll(嬰イ短調)
こんなの、いつ使うの?
「転調の成り行き上、そのように書かざるを得ない時」とでも言いましょうか・・・
例えば、曲の途中で一時的に同主調に転調し、元の調に戻る場合。
C dur の曲なら、C dur → c moll → C dur と推移します。
As dur の曲なら、As dur → as moll → As dur になります。As dur → gis moll → As dur にはなりません。
同主調への一時的な転調は、臨時記号をいくつか書き足すだけで書けてしまいます。
なので「転調した」という感覚を持たずに演奏している方も少なくないようですね。
全部の調を知っておくと、転調しても困らない
曲を詳しく読んでいくと、始まった調性のまま進んでそのまま終わることは、
ほぼありません。
途中で転調する(調性が変わる)ケースがほとんどです。
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ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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