曲の全体像を知ろう!スコアリーディング入門編
「スコアリーディング」とも呼ばれる行動、スコア読み。
と絶望しているアナタへ贈る、スコアの読み方(入門編)です。
そもそもスコアって、何が書いてあるの?
日本語では「総譜」と訳されます。すべてのパートが一まとめに書かれていて、指揮者はこれを見て指揮をしています。
しばしば「伴奏譜」と呼ばれているアレも、すべてのパートが書かれているという意味で「スコア」に分類できます。
決して、遠い存在ではないのです。
指揮者は大きいサイズのスコアを使いますが、楽器を弾く人はミニチュアスコアで大丈夫。
文庫本よりちょっと大きめのやつ。通勤カバンにもラクラク入りますね。
中身は、大きいやつの縮小版と思えばOK。
さあ、お手持ちのスコアを開いてみましょう。
目には何が飛び込んで来ましたか?
音符、休符、cresc.だの、dolceだの、muta in Aだの、アルファベットの羅列・・・
そう、ここには 曲のいろんな情報すべて が詰まっています。
スコアの仕組みを知ろう
オーケストラのスコアを例に、考えていきましょう。
楽器の並び順は決まっている
とりあえず、大ざっぱなルールを覚えておけばOK。
- 上から、木管楽器→金管楽器→打楽器→弦楽器
- 同じセクション内は、音域が高い楽器が上(下に行くにつれて音域が低くなる)。ただし、ホルンは例外的にトランペットより上に書く。
- 独奏楽器、合唱、ハープなどは、打楽器と弦楽器の間に書く
1段だけ調号が違う!移調楽器の存在
曲にもよりますが、他の段と調号が違う楽器、ありますね。
クラリネット、ホルン、トランペットに出現率高し。
ちょっと気になるけど、ミスプリでも何でもありません。
彼らは移調楽器と言って、「ド」の指使いで吹くと「シ♭」が鳴ったり「ファ」が鳴ったりする楽器なのです。
時には、楽器の都合で、読み替えて吹いたりもします。
※プロコフィエフなど、移調楽器も実音(実際に鳴る音)で表記する作曲家もいます。
見慣れない音部記号・・・
わりとお馴染みな、ト音記号とへ音記号。
スコアでは、この他に「ハ音記号」が使われます。
ヴィオラ、チェロ、ファゴット、トロンボーンの方にとっては日常お付き合いしている記号ですが、そうじゃなければ日常で接点は皆無でしょう。
ハ音記号のグッズとか、ト音記号に比べたら全然少ないしね・・・。
ちなみに、ハ音記号と一口に言っても、書く場所によって呼び名が異なり、ヴィオラに使うのは「アルト記号」、チェロに使うのは「テノール記号」と呼びます。
さて、どこが違うでしょうか?よ~く見ればすぐわかりますよ!
ハ音記号について、詳しくはこちらをどうぞ。
いよいよスコア読み入門!
やっと本題。
どうやって読んでいくか、スコアから何を読みとるか、順を追ってみていきましょう。
まずは、風景として眺める
経験上、 ページ全体を風景として眺めるところからスタート するのをおススメします。
私はかつて、「スコアをめくりながらCDは聴くけど、見ているのは自分のパートだけ」という状態でした。
つまり、「やたら、めくりの多いパート譜」に成り下がっていたのです!
たくさんの情報が詰まっているにもかかわらず!!!
それに気づいた私は、スコアとの向き合い方を変えました。
まず、全体を景色として眺めながら音源を聴くようにしたのです。
その結果、自分が弾くパートを、こんな点に注意して聴けるようになりました。
- 音程に気を付けた方が良いところ
- テンポやリズムに気を付けるべきところ
- 弾きにくいけど、特段目立たないところ
- 背景に徹するところ
- 絶対ハズせないところ
練習のポイントも絞れ、時短になり、なにより練習がラクになりました♪
全体像をパッと見るのに便利なスコア。まずは全体を見ることからスタートです。
自分と同じ動きのパートを探す
全体が見渡せたら、身近なところを攻めていきます。
自分と同じ動きをしているパートを探しましょう。意外や意外、すぐ見つかりますよ!
同じ動きをする仲間がいるとわかるだけでも、気持ちは変わりますよね♪
全くいなかったら・・・パートソロかな?練習頑張りまひょ。
メロディっぽく動いていても、3度違いなどでハモっていることもあります。
そこまでわかれば大収穫。
メロディにくっついて動けば良い ことがわかったも同然なのだから。
メロディ?和音?飾り?合いの手?
自分のパートは今どんな役割を担っているのか、考えましょう。
ハンバーグでいうところの、肉なのか、ソースなのか、付け合わせの野菜なのか、彩りのパセリなのか、はたまたお皿なのか・・・。
具体的には、こんな感じ。
- 主旋律なのか対旋律なのか
- 土台としてみんなを支えているのか
- どこかのパートと一本の線のように動くのか
- 絶妙に「なんでやねん!」とツッコむ役なのか
音それぞれに与えられた役割を知ることで、弾き方はもちろん、練習の方向性も見えるようになります。
静かな場所にもかかわらず音符がやたら細かい時も要注意。飾りの可能性があります。
コンチェルトのソロパートは、これらの合わせ技
コンチェルト(協奏曲)のソロパートを練習する時にも、スコア読みは欠かせません。
たとえ、ピアノ伴奏で弾くとしても。
ソリストが目立つように書かれている所が多いですが、よ~く読んでいくと、ところどころオケがメインになるんです。間奏以外でも。
・・・よ~く考えたら、コンチェルトってオーケストラありきで作曲されてるんだから、当然のこと。
そこに気がつくまで、私はずいぶんと時間がかかりましたが、気づいてからは練習がラクになりました!
スコア読みの効能
「効能」っていうと、なんだか漢方薬みたいですね~。
でも、スコア読みは本当に良いことずくめでした。
今まで聴こえなかった音が聴こえた!
スコアを読んだ後でCDやYouTubeを聴いたら、とてもビックリなことが起きましてね。
なんと、今まで聴こえていなかった音が聴こえてきたのです!
・・・正確には、聴き過ごしていた音というか。
「カクテルパーティ効果」という言葉、聞いたことありますか?
騒がしい中でも自分に必要な情報は聞き取れるという、アレです。
After→今までシャットアウトしていた部分を聴けるようになった
素直に嬉しかったです。
自分の世界が広がった瞬間を、この耳で体感できたから。
全体を知るとモチベーションが上がる
「石を積む人と教会を造る人」の話、ご存知ですか?
教会の建設現場を通りかかった旅人が、そこにいた職人に「何をしているのですか?」と尋ねたところ、1人は「石を積んでいる」と答え、もう1人は「教会を造っている」と答えたという話です。
全体を知らずに目の前の楽譜と対峙するなら、ただ石を積んでいる人と同じ。
自分のパートに与えられている役割を知って、共同でなにかを作り上げてる感じを、少しでも多く味わいたいものです。
スコアは怖くない。むしろ楽しい
どうか、最初から「書いてある音を全部読まなきゃ!」と思わないでください。
最初に見るべきところは限られています。
読み方さえわかってしまえば、何も怖くないのです。
曲の全体像を知って、より楽しく演奏しましょう!
ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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