アレグロとアンダンテの違いは?テンポ表記の意味と覚え方
クラシック音楽にちょっとでも触れたことがある人なら、アンダンテ、アレグロ、モデラート…といったテンポ表記の言葉を見たことがあると思います。
でも、

アンダンテは「歩く速さ」って言うけど、どんな歩き方?

アレグロも「速い」って聞くし、そういえばプレストも速かったような…どう違うの?
なんて思ったことありませんか?
この記事では、音楽の速度標語(テンポ記号)の世界を、語源やイタリア語のニュアンスを交えながら解説します。

テンポの速さだけじゃなく、曲の雰囲気やキャラクターを読み解くヒントになるかもしれません。
参考文献:これで納得!よくわかる音楽用語のはなし イタリアの日常会話から学ぶ [ 関孝弘 ]

これで納得!よくわかる音楽用語のはなし イタリアの日常会話から学ぶ [ 関孝弘 ]
遅めのテンポを表す速度標語
まずは、遅めのテンポを表す言葉をご紹介します。
代表選手はこの3つ!
- ラルゴ
- アダージョ
- レント
それぞれの意味をざっくり紐解いていきましょう。
ラルゴ(Largo)
イタリア語で「幅広く」という意味。
英語の「Large」とルーツは同じです。
洋服がブカブカだ!なんて時にも使うそうですよ。

アダージョ(Adagio)
「気楽に、安心して、くつろぎ」といった意味を持つ言葉で、原形は「ad agio」。
落ち着いた、穏やかな雰囲気を含みます。

レント(Lento)
英語だと “slow" がわりと近いようです。
シンプルに「ゆっくり」を意味します。

同じ「遅い」でも、それぞれ雰囲気が違うんだね!
速めのテンポを表す速度標語
続いて、速めのテンポを表す言葉をご紹介します。
代表選手はこの3つ!
- プレスト
- ヴィヴァーチェ
- アレグロ
それぞれの意味をざっくり紐解いていきましょう。
プレスト(Presto)
「すぐに、急いで」と訳され、英語だと「soon」がわりと近いようです。
イタリアでタクシーに乗って「presto!」と言ったらぶっ飛ばしてくれるとかくれないとか(知らんけど)。

ヴィヴァーチェ(Vivace)
「生きる」という意味の「vivere」がおおもとで、「生き生きと、活発に」と訳されます。
テンポの速さよりも、音楽の勢いやエネルギーがメインの言葉と言えるかもしれません。

アレグロ(Allegro)の本当の意味とは?
手元の伊和辞典で真っ先に出てくるのは「陽気に、快活に」。

え、「速い」じゃないの?
ご陽気でルンルンな気分の時って、自然と軽い足取りで歩いてたりしませんか?
決して重たい足取りではないですよね。
ふふふ、そういうことです。
「アレグロ=速い」ってのは、要するに結果論。

アレグロは速いって意味じゃないんだね!
陽気さが速さにつながるなんておもしろい!
中間のテンポを表す速度標語
つづいて、速くもなく遅くもない、中間ぐらいのテンポを表す言葉です。
代表選手はこの2つ。
- モデラート
- アンダンテ
モデラート(Moderato)
「控えめに」「ほどよく」という意味。
「可もなく不可もなく」といった感じでも使われます。
音楽用語では「中くらいの速さで」と訳されますね。
要するに「速くもなく遅くもなく」です。

アンダンテ(Andante)の「歩く速さ」って?
「歩くような速さ」と訳されるアンダンテ。
でも、歩くスピードって、人によって違いませんか?

そういえば、渋谷のスクランブル交差点を歩く人と、よぼよぼのおばあちゃんが歩く速さはぜんぜん違いますね…。
アンダンテの原型は、Andareという言葉です。
伊和辞典で真っ先に出てくる英訳は、「go(行く)」。

「walk」じゃないんだね!
「前に進む感覚」を持つテンポと考えると、納得いく気がしませんか。
語尾の変化でニュアンスが変わる?

そういえば、アレグレットって言葉も聞いたことあるよ!
まだ出てこないのかな?

アレグレットは、アレグロが変化した形なんだよ。
アレグレット・ラルゲットなど
イタリア語の語尾に -etto(エット)が付くと、度合いを弱めるニュアンスが加わります。

???
つまり、
- アレグレット(Allegro + etto = Allegretto):アレグロ度合いを弱める ≒ 結果的にアレグロより少し遅め
- ラルゲット(Largo + etto = Larghetto):ラルゴ度合いを弱める ≒ ラルゴよりやや速く
※ラルゲットの “h” はイタリア語の規則で入るものです。
−issimo がつく言葉
反対に、-issimo(イッシモ)が付くと、度合いが強まります。

ピアニッシモ(pp = pianissimo)やフォルティッシモ(ff = fortissimo)と同じ感じです。
つまり、
- プレスティッシモ(Presto + issimo = Prestissimo):プレスト度合いを強める ≒ プレストより速め
- アダージッシモ(Adagio + issimo = Adagissimo):アダージョ度合いを強める ≒ 結果的にアダージョより遅め

プレスティッシモ!?めちゃめちゃ速そうだね!
アンダンティーノ(Andantino)はアンダンテ(Andante)から派生した、Andante の縮小形です。
「アンダンテよりやや速く」「アンダンテよりやや遅く」両方の意味があります。曲の時代などに応じて解釈が変わるので、注意しましょう。
速度標語とメトロノームの関係:数値に頼りすぎるのは危険?
メトロノームには、数字の近くに速度標語が合わせて書かれていたりしますね。
でもそれは、目安や参考でしかありません。

曲の雰囲気やフレーズの流れを感じると、自然と“ちょうどいい速さ”が浮かんでくるものです。

メトロノーム上の数字は、いつでもどんな場面でも正解とは限りません。
数字にこだわり過ぎると、解釈の幅を狭めて窮屈になってしまうかも?
作曲家の時代背景も意識しよう
そもそも。
メトロノームが普及する前の時代に書かれた曲は、メトロノーム数字なんて考慮されていません。

そりゃそうだw
作曲家が「この曲は明るく活発な雰囲気」と思ってVivaceと書いたとしたら…
現代のメトロノームで測って演奏しても、うまく噛み合わないかもしれません。

楽譜の背景や音楽の内容と向き合うことが大切です。
どうやって覚えたらいい?

ただ速い遅いだけじゃなくて、いろんな背景があるんだね!
どうやって覚えたらいいのかな?

闇雲に暗記するのはよくないよ。
演奏に生きる覚え方を伝授します。
実際の曲と結びつけて覚える
たとえば今弾いている曲が
- 第1楽章:アレグロ
- 第2楽章:アダージョ
- 第3楽章:プレスト
だったとしましょう。
それぞれの楽章は、どんな雰囲気ですか?
テンポ感はどんな感じですか?
思い浮かべてみましょう。

ん〜、1楽章は確かに速く感じたけど、3楽章ほどは速く無かったかも?

2楽章は、4分音符単位でカウントしたら確かにゆっくりですね。
1拍の単位(なに音符を1拍で数えるか)に注意しましょう。
緩徐楽章はとくに要注意。
闇雲に暗記するよりも、印象に残りやすくなりますよ。

実体験に結びつけるのがいちばん記憶に残ります。
音源や解説を活用しよう

なにぃ、他の楽章を聴いたことがない?
それは大変だ!音源を聴いてみよう。

何楽章あるか知らないって?重罪だ!(笑怒)
まず、曲の構成を把握しましょう。

楽譜の前書きや解説文、ピティナ・ピアノ曲辞典のような信頼できる資料もおすすめです。
まとめ
音楽のテンポ記号(速度標語)は、ただの「スピード」ではなく、音楽の性格や表現のヒントです。
語源やニュアンスを理解することで、演奏の表現力もグッと深まります。

曲のキャラクターを知るヒントにもなりますね。
理解度が深まると、解像度の高い演奏ができるようになります!

“速い・遅い”だけじゃ語れないテンポの奥深さ、それが音楽の“味”なのかもにゃ。
速度標語の本来の意味を知って、表現の幅を広げたいものですね。
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ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。都立芸術高校・東京藝大をヴァイオリンで卒業後、東京藝大院修士ソルフェージュ専攻を修了。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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