休符で休まない!
突然ですが、「休符」という言葉に、どんなイメージを持たれますか?
そう問いかけておきながら、子ども向け音楽ドリルでどんな説明がなされているのか気になって、手元にあった中の2冊を、めくってみました。
うーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうにもしっくり来ない言い方。
というわけで、休符について考えてみようと思います。
休符は音を鳴らさないマーク
休符とは、音が鳴らない時間を表すマークです。
適度な間は、 緊張感や落ち着き を生み出します。
モーツァルト《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》の冒頭で比べてみましょう。
実際の譜面と音は、こんな感じ。
いっぽう、休符が無いと、こんな感じになります。
聴き慣れた「休符ありバージョン」に比べて、休符なしバージョンの方は、なんだか、ダラッとした感じがしますね。
そう、休符は 音楽に活力を加えるもの なのです。
英語ではなんて言うの?
日本語の「休符」にあたる言葉は、英語版のWikipediaではrest(music)、フランス語WikipediaではSilence (musique)で載っています。
restとsilence。
日本語の「おやすみ」とは、ちょっとニュアンスが違う感じですね。
「おやすみ」と言われて、寝る時の「おやすみなさ~い」のイメージが先行してしまうのは私だけでしょうか・・・。
休憩とマジ寝はだいぶ違う・・・よね?
先ほど、「休符は音楽に活力を加えるもの」と書きました。
元気を出すために、息抜きの時間が必要なのは、人間も音楽も同じ。
ですが、英語やフランス語のニュアンスから見てわかるように、「眠りこける」感じではないのです。
レッスンをしていると、無音の時間に対する意識が薄いケースに、よく出くわします。
「休符になると数えるのを止めてしまう」とか。
冒頭で挙げた子ども向けドリルのような感じで、導入期に「休符=おやすみ」として習うことや、そもそもの「休」という漢字から無意識に受けている印象とも、関係があるのかもしれません。
意識が休むと、落ちる原因にもなります。
中にはひと寝入りできるぐらい長い休符も
ベートーヴェンの「第九」を演奏した時の、舞台袖にて。
打楽器奏者の楽譜が目に入りました。
初めて見たよ。300小節より多い休符。しかも、1~3楽章は出番なし。
よって、舞台上がってから1音目を出すまで、約1時間かかることも。
でも、打楽器奏者の皆さまは、然るべき所でバッチリ入って来られる。
休符の間も、意識はどこかで音楽のほうを向いている 。そんな一例だと思います。
ソロとかカデンツァなら関係ない?
純粋に1人で演奏する曲なら、そこまで長い休符はありません。せいぜい、1小節のゲネラルパウゼがある程度でしょうか。
協奏曲のカデンツァ(自由に演奏する部分)にも、同じことが言えます。
「花のワルツ」のハープなんかもそうですね。協奏曲じゃないけど。
1人で弾くのだから、どれだけ間を取ろうが、関係なさそうに思えるかもしれません。
でも、作曲家は休符の長さをきちんと指示しているはず。
その指示を守った演奏と、そうじゃない演奏には、雲泥の差があります。上手く説明できないけどさ・・・。
休符を正確に表現しよう
アンサンブルやオーケストラは、相手のあること。当然、 休符の時間を含むリズムの正確さ を、必要とされます。
と言われても、休符は、頭ではでわかっていながらも上手くできない、もどかしさをも覚える厄介な存在。
でも、ちょっとした工夫で、あなたの休符、変えられますよ。
わりと長めの休符
休符が数小節ある場合の話です。これは簡単。
どこかのメロディを、一緒に、心の中で歌う。
たったこれだけ。
要するに、アタマをお留守にしなければ良いんです。
一緒に演奏してる気持ちになると、なおGood!
短い休符や、ウラ拍から出る時
ハッキリ言えるのは、数えすぎると出遅れる、ということ。
頭で休符と認識する時間と、それに体が反応して音が出るまでの誤差が、如実に表れてしまうんです。
・・・反射神経の問題?苦笑
実際に、休符の場所に音を入れて練習しています♪
休符を味わおう
チャイコフスキーの、交響曲第5番 第4楽章の一部を例に、見てみましょう。
次の画像は、実際の楽譜を少し簡単にしたものです。
(1段目が木管のメロディ、2段目が1stヴァイオリン、3段目が2ndヴァイオリン、4段目がヴィオラ、5段目がチェロとコントラバス。)
1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラに、アタマ拍が欠けた3連符がありますね。
この3連符、アタマの休符を意識しすぎると、次のような感じになってしまいます。
ぶっちゃけ、下の楽譜のリズムの方が、かなりラクに弾けます(笑)
でも、それだと、せっかくの素晴らしい音楽が、面白くなくなる気がするんです。
本当に楽譜通りのリズムで弾こうと思ったら相当ムズカシイですが、この、綺麗に割り切れないゴツゴツ感が、何とも言えないんですよねぇ・・・。
そう、こんな味わいも、休符という隙間があるからこそ。
ソルフェージュの先生、ヴァイオリンの先生、時々オーケストラと室内楽。
ヴァイオリン弾きのソルフェージュ講師はわりと珍しいようです。指導経験は延べ100人以上。茨城県立水戸第三高等学校音楽科、Y. A. ミュージックアカデミー等で指導にあたる。
「音大受験の1科目」としてのソルフェージュではなく、実際の演奏に結び付くもの、音楽をより楽しめるものを目指しています。あらゆる楽器の生徒さんに対応していますが、得意とするのはヴァイオリンをはじめとする弦楽器。ヴァイオリンを学ぶ人に必要かつ不足しがちなことを、自身の実体験をふまえてレッスンしています。
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